箱入り娘に、SPを。
誘拐されて、チンピラに誰と電話を繋いでいたんだと問いただされた時のことだ。
「大好きな人」と言ってしまったから。

「恥ずかしい。あの時のことは。ダメです」

「でも同意の上でキスしないと。僕が無理やりしたみたいになっても嫌だよ」

大真面目に小太郎さんがそんなことを言うので、こちらは照れる時間もない。

「…………私も、好きです。好き。…大好き」

「────じゃあキスしてもいい?」


これはどうやっても断れない。というか、断るつもりもなかったけれど。私はどう動いたらいいのか。
なにも分からなくて、じっと彼の焦げ茶色の瞳を見つめる。

「……はい。小太郎さんとなら、キスしたいです」

そう言ったら、彼がまたぎゅうっと抱きしめてくれた。

「初めてが僕でよかった。絶対にたいせつにする」


私の髪の毛を梳くように、大きな手のひらが後頭部に回され、ゆっくりと、そっと唇が重なる。
それはすぐ離れてゆき、そしてまたすぐに重ねられた。

何度も何度も繰り返しているうちに、私の方がギブアップした。
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