箱入り娘に、SPを。
「待って小太郎さん!長い!初めてなんです!」

プシューッと全身から煙でも出ているんじゃないかというほど、身体が熱くてどうしようもない。
初めてだって言ってるのに、手加減なしでびっくりした。

それでも彼は全然やめてくれない。
唇がダメならどこでもいい、とばかりに頬や髪におとしてくる。
なんとか応えようとしてまた唇を重ね合わせるものの、甘い濁流に飲まれそうになって動けなくなってしまった。

私の真っ赤にのぼせ上がった顔を確認したからか、やっと小太郎さんは止めてくれた。

「ごめんごめん」

「……心臓が痛くて死にそう」

「ほんとに君ってひとは…」

前にも言われかけた、彼のそのセリフ。
あの時は途中でやめていたけれど。

「愛おしいな」


ぽんぽん、と心臓を落ち着かせるように背中をさすってくれているけれど、ちっとも戻らない。

“愛おしい”なんて甘いセリフを、初めて言われた。
彼の膝の上に乗ったまま、私は余韻に浸っていた。



「ゴホン、ゲホッ、ゴホッ…」

ふと、わざとらしい咳ばらいがどこかから聞こえてききた。

小太郎さんが瞬時になにかを察し、迅速に私を元のパイプ椅子に戻す。
そしてスタイリストかのごとく、私の乱れた髪を手早く直してくれた。
すべて整えたあと、見えないほどの速さでカーテンを開く。

引き扉の向こうに、見たことのある初老の男が二人。

「三上くん…入るよ」

父とツネさん!!

ツネさんは廊下に立ったまま、申し訳なさそうな顔をしている。
病院に入る直前に来ていた電話の主は、父だったのだろう。

父だけが病室にズカズカと入ってきた。


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