箱入り娘に、SPを。
箱入り娘に、恋人を。
「ずるいよお!彼氏できたからおつー!お先に失礼しますってわけ!?私ひとりでピラティス行けっての!?」

「違う違う!そうじゃなくて!週に二回通っていたのを、一回に減らしたいって言っただけじゃない!」

「美羽ってそんな薄情者だったの!?」


梨花との交渉は難航していた。
ちっとも納得してくれない。でもそれは仕方のないことである。私も自分で自分を自己中だなと思ってはいる。

思ってはいるが、好きな人に会う時間を作るためならどんなにたいへんでも梨花を説得したい。

「ジム通いはやめるつもりはないよ。運動したい気持ちもあるから。でも、本当に彼に会える時間が全然ないの!」

私と梨花の会話は、店主の由花子さんに丸聞こえである。
カフェに入ったはいいものの、テーブル席は満席でカウンター席しか空いておらず、自然にそこに座ることになったからだ。

「はぁー。美羽の初の彼氏がハイスペとか許せない。完全に人生の勝ち組じゃん」

魚介類をふんだんに使われたトマトソースパスタを口に運びながら盛大にため息をつく梨花に、私も負けじと言い返す。

「梨花なんて経験豊富じゃん!美人だし!いっつも羨ましかったんだから!それに梨花がその気になったら鬼塚さんだってすぐに」

「鬼塚さん?」

おっと!と口を塞いだがもう遅い。
梨花の大きな瞳がキラリと輝いた。

「ねえ、誰?」

「い、いや、それはその…」

二人で小競り合いをしているのを、由花子さんがそれはそれは面白そうに笑って聞いていた。

「楽しいなぁ~。こういうのを聞きたかったのよ!女子トーク!」


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