箱入り娘に、SPを。
もうすっかり私の顔の傷は消え、身体の痣はまだ残っているもののだいぶ回復した。
仕事も復帰し、書店で働き始めていた。
リスタートというよりも、いつもの変わらない日常が動き出しているところだった。

変わったことは、私に恋人もしくは彼氏と呼べるひとができたことくらい。

「由花子さーん。人生って不公平ですよね?美羽に逆転満塁ホームラン打たれた気分」

「たしかに彼、とても好青年だったもんね。美羽ちゃんといつ付き合うのかしら~なんて思ってたもの」

「ちょっと!由花子さんまで!やめてください」

「いっつも別々に座っていたじゃない?次に来た時には二人並んでほしいなあ」

梨花も由花子さんも私への当たりが強い。
止めようとしたとて、逆効果になりそうなのでもうなにも言わないことにした。
残り少ないガパオライスをかき込むようにして食べた。

パスタをフォークでくるくる巻いて、梨花が「でもさ」とこちらを向く。

「ある意味、一件落着?もうSPはいないんでしょ?」

「うん、もういないよ」

「自由の身じゃーん!」

そこだけは祝福してくれるんだ、とずっこけそうになるのを我慢してあの時の出来事を思い出してうなずいた。

「そうは言っても、お父さんを説得するのはほんっとーに大変だったんだから!」




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