箱入り娘に、SPを。
不満たっぷりの私の顔に気づいた小太郎さんが、やっと意を決したように『あの』と父に向き直った。

『警視総監のお気持ちは痛いほどよく分かりますが、美羽さんのことを少しだけでいいから信じてみてもらえませんか?』

『…信じるとは?』

『日々、目の前にあることにつねに気をつけて過ごします。自分も、美羽さんも』

『それを君が言うのか?美羽の気持ちを全部!根こそぎ!持っていった君が???』

『……………申し訳ございません』

チーン。と、どこかから効果音でも聞こえてきそうな雰囲気になってしまった。


『公夫くーん。ちょっと厳しすぎないかー?』

ここで登場したのが、部屋の外で様子を伺っていたツネさんだった。
失礼するね、と室内へ入ってきた彼は、まるでお通夜のようになっている空気を一変させてくれた。

『公夫くん。三上くんは俺の部下だよ。ずーっと一緒にやってきたから分かる。彼の性格は俺のお墨つき。それでもダメ?心配?』

『心配!今だって先に美羽に手を出したのは三上くんだぞ!ツネも聞いてただろ?』

遮るほどの速さで答える父。大人げない。
というか、本当に聞いていたのかと回し蹴りでも食らわせてやりたかったが、それは今じゃない。
あとで実行してやる。

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