箱入り娘に、SPを。
下の階にいるという梨花に会いに行くため、エレベーターへと乗り込む。
他に誰もいない動き出したそれの中で、私はぼそりと彼に尋ねた。
「あなた、何歳ですか?……子守りを頼まれたようなものですよ。いいんですか?」
「三十一歳です。たぶんそんなに君と変わらないよね?僕でよければ話し相手になるよ。退屈かもしれないけどね」
「…………それは、こっちのセリフです」
あっという間に、目的の階に着いた。
冷たい感じのする廊下を、ひたひたと歩きながら私はようやく彼と向き合った。
もう、諦めるしかない。
あの父親に盾突いて良かった記憶なんかないし、どのみちクスリの売人がいるようなクラブへ行ってしまった時点でアウトだったのだ。
さようなら、私の自由への道。
「あの、折笠美羽です。……父の横暴に付き合わせてしまって申し訳ありません。よろしくお願いします」
「はい。僕は三上小太郎です。不束者ですがよろしくお願いします」
温厚そうな表情から察するに、彼はどうやら本当にこういう性格らしい。のんきというか、マイペースというか。
…あのクラブで同時に飛びかかってきた男二人をどういなしたのかはいまだに謎ではあるが。
私と彼は、どちらともなく握手を交わしたのだった。
契約を結ぶという、とても事務的な。