箱入り娘に、SPを。
「─────そっかあ。ついこの間、警護する人がいなくなったって喜んでたのにね…」
同情気味に私を哀れんだ目で見つめるのは、店長のマキさん。
三十五歳で店長になった彼女は、持ち前のサバサバした性格とテキパキした指示で今のお店をうまく回している。
新人の時からお世話になっているので、私の父がかなり難ありであることも把握しており、事情も理解してくれている。
その隣で同じように「なんて可哀想な子だろう」と眺めてくるのは、数ヶ月前からうちのお店に異動してきた杉田さん。
たぶん三十代半ばくらいだろうが、少し前に好きな人に振られたんだと猫背の背中をもっと丸めていた。
彼の特徴はなんといっても、丸メガネ。
小洒落ているけれど、若干神経質なのか服の着こなしがつねにジャストサイズ。ぴっちり。
性別も年齢もバラバラだけど、この二人はいつも私を妹のように心配してくれて、そして哀れみの目を向けてくる。
「今度はいったいどんな危ないことしたの?」
杉田さんのため息まじりの口調がやけに上から目線で、こっちだって泣きたいんですと言い返した。
「危ないことなんてしてないです!ただ、ちょっと声かけられた人たちについていったら、たまたまその人たちがクスリの売人だったらしくて、それで連れていかれたクラブで少しいざこざを……」
「いやそれ普通にマジで危ないやつ!!」
マキさんと杉田さんがほぼ同時に私の言葉を遮った。
こんな時ばっかり気が合っちゃって、この二人。
「で、結局また元の生活に戻ったってわけね」
足を組んでバリスタで作ったカプチーノを飲んだマキさんが、見えはしないものの透けているかのようにドアの向こうに目をこらす仕草をする。
「どうにか振り切って遊びにでも行ってきたら?」
「それ、前は通用したんですけど……」
あの彼が担当になる前に、何度も何度も警護してくれるベテラン刑事さんたちをちょろまかして飲みに出かけたことがある。
ずっと監視下にあることのストレスったらないからだ。
誰も気づいていないところで、気兼ねなく友達と飲みに行く。それくらいさせてくれたっていいじゃないか!と。