箱入り娘に、SPを。


彼は私がお店に出てきたことに気がつくと、顔を上げてふっと微笑んだ。
この出し惜しみしない笑顔の持ち主が、私の警護人・三上小太郎さんだ。

……なんか、本性を隠してないか?

父のせいで嫌というほど性格をねじ曲げられたので、彼の微笑みも怪しげな愛想笑いにしか見えない。


「イラッシャイマセー」
と恭しく彼の横を通過すると、さりげなく私は腕を掴まれて人気の少ない園芸の雑誌コーナーへと引き込まれた。

「こ、小太郎さ……」

「シッ」


いきなり肩を抱かれてなにごとかと慌てていると、彼は人差し指を立てて私を黙らせる。

そんな小太郎さんはいつもとは違う鋭い目つきをしていて、息を飲んで視線の先をたどると、─────万引きの瞬間。


「声、かけてきます!」

「待って、たぶんまだやるだろうから」

「え…」

意気込む私に、彼は落ち着いた口調で目を細めて万引き犯を見つめていた。

まだ若い、高校生か中学生か……男の子がキョロキョロと辺りを警戒しながら何冊か漫画本をバッグへ入れている。
そして、小太郎さんの言う通り、次はどれにしようかと品定めしているようだった。

「あの子が万引きを終えてお店を出たら、美羽さんが声かけてくれる?僕のところに連れてきて」

「は、はい」


─────たった二週間で、万引き犯を見つけることこれで十数人目。しかも絶対に現行犯。

彼が刑事というのは伊達じゃない。
私たちのような一般人にはない着眼点を持っていて、挙動不審な動きをすればすぐに気がついて、相手には分からないように行動を見守る。

普段がヘラッと笑っているだけに、小太郎さんには申し訳ないけど二面性を感じてしまっていた。

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