箱入り娘に、SPを。
「事が起こる前に防げたらよかったのに。僕のせいだ。申し訳ない」
はからずも、異性と手を繋いだことがない私の初めての相手は小太郎さんになってしまった。
駅ではしっかり力強く握られていた手は、もう今は離ればなれである。
本当に心から申し訳なさそうに謝ってくる彼に、逆に恐縮してしまう。普段なら絶対に見せることのない反省しきった顔だったからだ。
「私が満員電車に無理やり乗っちゃったから」
「あそこで僕も無理やり一緒に近くに乗り込めばよかった。…その様子だと、初めて?」
「はい…」
見慣れた最寄り駅からマンションまでの道のり、私は荷物を抱きかかえたままうなずいた。
なんだかもう、この体勢から動けない。
いつもはずけずけものを言ってくる小太郎さんも、さすがにこの日だけは違っていた。
「電車、これから怖くない?」
トラウマになってしまったらという不安からの配慮ある言葉に、私はなんとか笑顔を作ってみる。
「大丈夫。こんなこと、もうないと思いますし。不運でしたね」
「明日からは僕のそばを離れないでね」
心臓が、今日はずっと跳ねている。
彼が放つ言葉ひとつひとつに、なにかしらの威力が込められているということに、本人は気づいていないのだろうな。
はからずも、異性と手を繋いだことがない私の初めての相手は小太郎さんになってしまった。
駅ではしっかり力強く握られていた手は、もう今は離ればなれである。
本当に心から申し訳なさそうに謝ってくる彼に、逆に恐縮してしまう。普段なら絶対に見せることのない反省しきった顔だったからだ。
「私が満員電車に無理やり乗っちゃったから」
「あそこで僕も無理やり一緒に近くに乗り込めばよかった。…その様子だと、初めて?」
「はい…」
見慣れた最寄り駅からマンションまでの道のり、私は荷物を抱きかかえたままうなずいた。
なんだかもう、この体勢から動けない。
いつもはずけずけものを言ってくる小太郎さんも、さすがにこの日だけは違っていた。
「電車、これから怖くない?」
トラウマになってしまったらという不安からの配慮ある言葉に、私はなんとか笑顔を作ってみる。
「大丈夫。こんなこと、もうないと思いますし。不運でしたね」
「明日からは僕のそばを離れないでね」
心臓が、今日はずっと跳ねている。
彼が放つ言葉ひとつひとつに、なにかしらの威力が込められているということに、本人は気づいていないのだろうな。