虚愛コレクション
シンとした部屋で聞こえたのはベッドが軋む音。
彼が私のすぐ前まで顔を寄せてきた。つり目がちな目が私を捉えている。
「俺が切った所を見て……いや、初めて会った時もか。その時のアンタの目、興奮してた。瞳孔開いてたよ。この、目」
「っ、」
そっと瞼に手のひらを乗せられ反応してしまう。閉ざされた視界は薄暗く、息遣いが聞こえるだけ。
「それは、確かに同情とかそんな類いのものじゃなくて、そう、子供が喜んでるときのそれとよく似てる。でも、今は……」
と、手が離される。数秒遅れて目を開けば彼は変わらず私を見ていた。
「今は、何かを責めたような目をしてる」
「目でそこまで判断出来るわけないです」
精一杯の反論は、彼の「出来る」という断定に呆気なく崩された。
「目は口ほどに物を言うって言うでしょ?目を合わそうとしない人は一生分からないだろうけど、目を合わせ過ぎていると分かることもあるよ。やっぱり、言葉には勝てないけど」
今ので全部繋がったと、彼は言った。