虚愛コレクション
「恋人ごっこ、ね。ようやくアンタも彼氏だの何だの言わなくなったわけだ」
「いい加減無駄だって理解しましたからね」
「ふぅん。いいよ。ごっこなら付き合ってあげても」
「え……」
思わず間の抜けた声を上げてしまったのは、自分から提案しておいてなんだが、十中八九勝ちようのない反論を述べられて断られてしまうと思ったからだ。
それを、意外にも受け止められて戸惑ってしまうのは致し方ない事で、同時に嬉しいと思ってしまうのも仕方ない事だ。
「じゃあ、約束ですよ?絶対ですよ?指切りしましょう指切り」
「指切りって……子供くさ」
ぼやく彼を他所に、傍まで近寄って勝手に手を取り、指と指を絡めた。
細い指は私の指にされるがままだったが、それでも無理やりほどくことはなかった。
それがまた嬉しくて仕方がない。まだまだ悲観しなくても大丈夫なんだな、とまた頬が緩む。
「すっぽかした場合どうなんの」
「え?んー、そうですね……すっぽかした場合、別の日に仕切り直しって事で。――……ゆーびきった」
クリスマスが楽しみだと言う私に、絶対に崩さない無表情な彼。
「アンタ絶対、子供っぽい感じのがお似合いだよ」
言われて、ああ、確かに今のは子供っぽかったと気付く。だが、どうって事ない。
「嬉しいときは素直に喜ぶんです。私」
楽しみだなぁなんて呟きながら、彼が作ってくれたコーヒーを口にした。