虚愛コレクション
「ばっ……!」
馬鹿じゃないのか。と手を振り払いかけて思いとどまる。
そんな中身のない形だけの行動をして何の意味になる。そう思ったのに、そんな行動をとる姿が自分と重なってしまったのだ。
いつだって、形ばかり作って中身など詰める事が出来なかった。
同じだ。今の神楽君は私と同じなのだ。虚構の箱を手にして彼に渡しては、簡単につぶされてしまっていた私と。
「っ!」
そう気づいた時に湧き上がったのは同情心。神楽君に対してではない、いつかの私自身に対して。そう、それも彼が言っていた。
『同じように可哀想な人』
そんな人を見つけた時に、私はどうしようもなく動けなくなるらしい。
「――ほら、行こう」
何かを汲み取ったであろう神楽君は、何も言わずに屈託のない笑みを浮かべて私の手をグイッと引っ張った。