虚愛コレクション

でも、きっと、神楽君程の洞察力を持ってすれば本当に私の望む様に話を持っていってくれるのだろう。

私の、このドロドロに濁った感情すら綺麗に浄化してくれるのだろう。


「うっ、く……っ！」


吐き出そうとする本能と、吐き出してはいけないと言う理性。

ああ、本当に厄介だなぁ。“いい子の私”を殺めてしまえない。

速まる鼓動に、整わない息。それでも口にする。


「まだ……まだ、神楽君が私の邪魔をする理由、聞いてない」

「――……」


無様に足掻く私に対して何かを思案するようにその眼で此方を見つめ、少しだけ目を細めた。

その表情に感情なんてないように見えて、少しだけ彼を彷彿とさせる。

神楽君の奥に、彼を見ていたとでも言うのだろうか。


「何言ってんの。僕が祈ちゃんの邪魔をする理由なんて、最初から言ってるだろ？千代の為だって」

「それがおかしいって言ってるの。千代の為だって言うなら、もっと早く、それこそ透佳さんと千代が会ってしまった段階で私の邪魔をするべきだった筈だよ」


口を出さないつもりだった。よく会っているから。などとは言っていたけれど、今更だとも思ってしまうのだ。

それに、神楽君は言った。


「私なんかよりも早く透佳さんの事を知っていたのなら、もっともっとやりようだってあった筈だよ」


私と彼との関係など早くに気づいていたに違いないのに、何故今だったのだ。

思い焦がれて、焦げ付いてしまったこの段階で。

グッと歯を食い縛って神楽君の言葉を待とうと思ったのに、体の力が妙に入らなくなってまた、グラリと頭が揺れた。


「――……もっと早くにそうしていたら、私は神楽君を一番に……っ！？」


揺れた頭から零れ落ちる言葉は一番言ってはいけなかった言葉な筈だ。

気づいていても自分で言ってしまっては認める事に違いない。

確かな“依存”だったと。