虚愛コレクション
制服が乾くまでの間彼の部屋に滞在する迄はいいのだが、お風呂から上がれば彼の部屋の床には大量の紙が散らばっていた。
足の踏み場がない。とまではいかないが、そこそこに床が紙埋っている始末なのだ。
前に来たときは、殺風景なだけだったのにこれはどういうことなのか。散らかすような人には見えないのだが。
目を丸くしながら膝を一度折る。
「……ゴミですか?」
適当に近くにあった紙を拾い上げて見てみればどうやら何かのレポートのようで、達筆とも呼べる字体が並べられていた。内容は読んでもよく分からない。
テーブルの前には現在進行形で紙に何かを書いている彼がいた。
彼は私がこの部屋に踏み込んでも決して此方には顔を向けずに、ただ、ひたすらそれと向き合っていた。
「課題」
そう短く私の言葉に返ってきたのは少し経ってから。それ以降に何かを告げる事はなかった。