虚愛コレクション
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雨も上がった暗い夜道を歩いていた。この辺は少々人気が少ない。
と、言うより、曲がる道を間違えて一本ズレた細めの路地に入ってしまっていたのだ。
気づいて失態に思っていたのに、何となく戻らなかったのは間違いだったかと溜め息。
少しだけ怖い。何だか今日はついてない日らしい。
またもう一度、溜め息を吐き掛けた時、
「っえ、やっ、何!?」
肩に重量感を感じた。オマケに後ろに引っ張られる引力。率直に言えば、誰かに羽交い締めにされていた。
だが、この匂いはよく知っていた。だってさっきまで鼻に触れていたのだから。
「……とうか、さん?」
覚えがあったとしても、根拠などまるでなく、恐る恐る聞き、ゆっくり振り返る。
「こっちの道、一人だと危ないよ」
見上げて、何でいるのか。と聞く前に、回されていた腕は遠ざかり彼は踵を返して先を歩き始めた。
慌てて彼に着いていくも、歩幅のせいで横には並べない。
だから、代わりに後ろ姿を眺める。部屋にいた時そのままの服装。手には傘。私が貸してもらったあの傘だった。