虚愛コレクション
ようやく元の道にまで戻り、人気のある場所へ。彼は送ってくれるのか、帰らずにそのまま先を歩き続ける。
そこで話の続きだ。ポツリと言葉が呟かれた。
「あの道の通りに、精神科病院があるんだ」
「精神科……?」
だから?と意味合いを込めた。
「夜になると、脱走とかする人がいるからね、そんな人は大抵頭がおかしいんだよ」
後は分かるでしょ?そんな意味合いで返される。
つまりの事、その頭がおかしいに絡まれたり、何らかの危害を加えられたりするかもしれない。と言う事で私の脳内で結論付けた。
「そうでなくとも、この辺ガラの悪い人多いからね」
と、不意に彼の足は止まる。自然と私の足も。
振り向いたその瞳は夜よりも暗い黒。冷たい黒。見下ろすような視線に優しさなどあったものか。言葉に私に対する想いがあったものか。
「アンタがそれに巻き込まれて、俺に危害が及ぶのを避けたいわけ」
ほら、自分だけだ。自分勝手な言い分だが、裏表がない分いっそ清々しくも思う。
ここで絶対に言わないだろうが、私の事が心配なんて言葉を吐いたとしたらそれは絶対嘘くさく感じた事だろう。チープなものに感じただろう。
ああ、この人のこう言う所がいいな。なんて。