虚愛コレクション
余裕を見せるように、自分を嘲笑うように、クスリと笑ってみせた。
「透佳さんに関係ない事なのに危害なんて及ぶ訳ないじゃないですか」
「“もしもの話”だったら、何十通りも言ってあげれるけど、俺が一番危惧してるのは……」
すっと、手が伸ばされる。ゆっくり、徐々に、頬に。くすぐったい。
「この、アンタの顔に傷がつく事」
ツッと冷たい指先で頬を撫でられ、全身が逆立つ。
緩く、彼の手を取った。でもこの手を握り返してくれることはない。
分かっていながら、この質問をしてみせるのだ。
「それは彼氏としての心配ですか?」
「彼氏になった覚えはないよ。俺はアンタの顔が好きなだけ」
「――……」
ほらやっぱり。そう思う気持ちがあった。
やはり、彼は容赦などない。顔だけ、上っ面だけ見ているなんて、私の周りの女子高生から言わせると最低行為だ。逆は棚に置いているが。
だからと言って今はどうって事はない。
本当ならここで憤慨なりなんなりするだろうが、私はやっぱり分かり切っている最低な答えに満足感があった。