虚愛コレクション
「っと。まずは自己紹介からしたほうがいいか」
「え?あ、自己紹介……ですか」
改まって言う人とは出会ったことがないので戸惑いつつ、次の言葉を待つ。
「僕の事は神楽って呼んでくれたらいいよ。――……祈ちゃん」
「……あれ?何で私の名前知ってるんですか?」
バッと顔を上げ、横を見上げる。色素の薄い髪が、斜めに垂れた。相手はコテッと首を傾げたのだ。不思議そうな顔をしながら。
「同学年の黒髪ロングの可愛い顔した祈ちゃん。じゃねぇの?」
「……はい?」
何処の誰と間違っているんですかと聞きたくなるが、祈と言う名はそうそうない。けれど、何と言うか可愛い顔と言うのは余計だ。
「れ?おかしいな。プリクラで見た感じと同じ気がしたんだけどさ」
「プリ……クラ?」
「うん。ほら、ちぃ……じゃない。千代と撮ったやつ」
「千代……?」
聞けば聞くほど訳が分からない。何故千代が登場するのか。この人と千代に関係性があるのか。
頭上にクエスチョンマークを飛ばしまくっていると、彼は目を細めて笑ったのだ。
「千代がよく祈ちゃんの話聞かせてくれるから知ってんよー」