雨宿り〜大きな傘を君に〜
放課後、自習室で過ごす時間を使って滅多に降りない駅に向かった。
大きなデパートや百貨店が並び、ほとんどのものを揃えられる場所だ。買いたいものが決まっていれさえすれば…。
案内板を見て男性物の階に立ち寄る。
母は私に大金を残してくれたからお金には困らないけれど、高価なものよりも先生が喜ぶものをあげたい。
ネクタイ、お財布、キーケース。
どれもお洒落なものだけれどありきたりなプレゼントになりそうで、即決できなかった。
今更サプライズなんてできないし、いっそ先生に欲しいものを聞いてしまおうか…いや、さすがにダメだよね…
「コレなんか素敵じゃん」
隣りから聞こえた声に、ショーケースから顔を上げる。
「え…」
まさか自分に話しかけられているとは思いもしなかったけれど、隣りに立つ金髪の女の子は明らかに私を見ていた。
「私、大学の合格発表を見た後に、先生にお礼の気持ちを込めて少し高めの名刺入れ買ったんだよね。先生が社会人になった時に使ってくれたらなぁと思ってさ」
まるで威嚇されているような鋭い目付きで私を見下ろす彼女は、1度会っただけだが忘れもしない、有明沙莉さんだった。