雨宿り〜大きな傘を君に〜

気を抜いてしまえば鼻歌が出てしまう程に1日浮かれていた。


「見て!早起きしてチョコ作ったよ!放課後は彼氏が迎えに来るから一緒に帰れないよ〜」


「羨ましい!でもうちも彼にチョコ届けに行くから!」


「あたしはさっき先輩に渡してきたよ!」


いつも耳障りであった今日限定の会話にさえも共感できた。


菱川先生への誕生日プレゼントは、手作りのケーキにした。バレンタインデーにも関連してチョコレートケーキだ。

実は今夜行くお店に事前に連絡を入れて、食後に私のケーキを出してもらえないか頼んでみた。家で食べるよりも雰囲気のあるお店で食べた方が、きっと美味しく感じるだろう。


ダメ元で頼んだサプライズだったけれどお店の方は快諾してくれた。

放課後、ダッシュで家に戻って冷蔵庫のケーキを取り出し、お店に預けて、塾に行く。ハードなスケジュールだけれど、自宅からお店まではそう距離がないため今日だけはタクシーという贅沢な手段を使うつもりだ。

考えるだけで、心が躍る。


菱川先生は驚いてくれるかな。


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