雨宿り〜大きな傘を君に〜

崎島がくれたツーショット写真。

2人は親密な関係かもしれないと疑いつつも、菱川先生に確かめることはできなかった。
一から十まで詮索していたら先生も嫌な気持ちになるかもしれないと、勇気が出なかった。


「一生懸命に作ったので、本当にお願いします」


「……」


佐渡先生は頭を下げた。

手作りチョコレート。
容易に想像できる紙袋の中身。

受け取らないで。
伝わるはずないけれど、黙って菱川先生に念を送った。


けれど、


「分かりました」


「良かった…!ありがとうございます」


菱川先生は頬を赤らめた彼女からしっかりと紙袋を受け取ってしまった。


ねぇ、先生。
同僚の先生からチョコレートを渡されるなんて、冴えない塾講師らしくないよ。

そもそも可愛い先生から好意を抱かれている時点で、設定と違うよ。車を運転していること以上に、似合わないからね!


たかがチョコレートひとつ。
それでも私の心を乱すには十分だった。

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