雨宿り〜大きな傘を君に〜
ほとんどのお皿が空くと、菱川先生の背後に立ったウエイターが合図してきたため、小さく頷く。
そしてすぐにウエイターがケーキを持ってきてくれた。
「お客様、お誕生日おめでとうございます」
「誕生日?」
ウエイターの言葉に先生は首を傾げる。
やっぱり頼んで良かった。
白いテーブルクロスの上にあるケーキは、二割り増しに美味しそうに見える。
「先生。遅くなってしまったけれど、私からのお誕生日プレゼントです。一応、手作りです」
「緒方さんもお喋りだなあ。撮っていい?」
はにかみながら先生は携帯を取り出す。
「たいしたものでなくて、すみません」
「いやいや、完璧な見た目だよ。ありがとう」
何枚も写真を撮ってくれた。
「ハナちゃん、笑って」
「まさか私とケーキを撮ろうとしてます?先生を撮りますよ」
「俺のために作ったケーキと、素晴らしいパティシエを撮りたいの。ほら、早く」
仕方なく、笑う。
菱川先生も笑ってくれたから、サプライズ成功かな。