雨宿り〜大きな傘を君に〜
ハート型のオブジェ。
そこで今夜写真を撮ることで私たちは永遠に結ばれるのだろうか。
菱川先生が私から離れないよう、先生に呪いをかけてくれるのだろうか。
「最後に言わせてください」
「うん?」
「菱川先生、好きです」
「……最後って?」
先生の聞き方が優しくて。
私をいたわるような視線から目を逸らす。
「好きだからこそ、私は先生の幸せを1番に願っています。私が先生のことを縛っていたら、あなたは幸せになんてなれないと思うので、もう先生を想い続けることは止めますね。頑張って、忘れます」
「頑張れば、忘れられるの?」
「……」
「忘れなくていいよ。何度も言うけれど、俺はずっと君の傍にいる」
そうやってまた…。
「先生は有明沙莉さんとのことがあって中途半端な接し方はしないと決めているのだろうけれど。私は有明さんではないです。先生に愛されなくても、悲観的にならず、ちゃんと前を向きますから」
「沙莉のことは、関係ないよ」
ーー沙莉。
初めて先生は私の前で彼女を名前で呼んだ。
それだけで胸が締め付けられる。
先生は屈み込み、私と視線を合わせた。
「俺も、ハナちゃんが好きだよ」
勢いよく顔を上げる。
全ての音が消え、先生の言葉だけがこだました。