雨宿り〜大きな傘を君に〜
スキップでもしてしまいそうな程に晴れた気分だ。崎島と向き合えたことで、心のわだかまりが消えた。
後は菱川先生へきちんと思いを伝えるだけだ。
バレンタインデーの夜、私を好きだと言ってくれた先生の本心を逃げずに確かめよう。
部屋着に着替えて、先生の部屋の扉を叩く。
「どうぞ」
そっと扉を開ければ、ベッドに腰掛けて先生は資料を読んでいた。
「ただ今帰りました!」
「おかえり。楽しかった?」
資料をベッドサイドに置いた先生に手招きされ、隣りに座る。
「崎島に告白されて、私は菱川先生が好きだと打ち明けました。勝手にごめんなさい」
「…ハナちゃんが決めたことなら、異論はないよ。崎島は納得してくれた?」
「頑張れって応援してくれました」
「そっか」
「先生は何をしてましたか?お仕事?」
「緒方さんの生徒の論文の添削を頼まれてね。俺は数学講師であって、国語は担当外なんだけどね。ひと息ついたところだから、お茶でも淹れようか」
「はい。先生、本を返しますね」
私が先生に贈った【恋は雨音とともに】を渡す。
「感想を伝えてもいいですか?」
ずっと先延ばしにしていたけれど、今なら上手く伝えられるような気がする。
「もちろんだよ」