雨宿り〜大きな傘を君に〜
先生の香りに包まれ、身を任す。
背中に手を回せば、先生が笑う気配がした。
「ハナちゃん」
いつもより近くに聞こえる先生の声。
大好きな声に耳をすませる。
「結婚を前提に、俺と付き合ってください」
信じられない。
まさか、菱川先生から言ってくれるなんて。
「私も、今日、言おうと覚悟してました」
「うん?」
少し顔を上げて先生と向き合う。
優しい瞳が私だけを見てくれていることが嬉しくて、目尻が熱くなる。
「高校を卒業したら、私と結婚してくださいと伝えるつもりでした」
先生は驚いた顔をしたけれど、ここまで言ってしまったのだからと勢いに乗せて伝える。
「私たちの年の差は永遠に解消できないものですが、私のことで先生が後ろ指をさされないよう、頑張りますから。家事も勉学も精一杯頑張って、先生自慢の奥さんになれるよう努力します」
「ありがとう。こんなに可愛い奥さんを迎えられるなんて、俺は幸せ者だね。高校を卒業したら、ハナちゃんを俺だけのものにするよ」
「今でも私は先生だけのものですよ」
「戸籍上も、君の身体も全部、俺だけのものにするって意味だよ」
「身体って…」
少し動揺すると、不適な微笑みを浮かべた先生がいた。絶対、私の反応を見て楽しんでるよ。