雨宿り〜大きな傘を君に〜

2人は大学生という設定だけれど、特別変わったことはない。というか、先生を名前で呼ぶなんていう心構えはできていません!無理!


「はい、あーん」


「えっ、」


デザートとして付いてきたプリンを掬い、先生は
私の顔の前にスプーンを持ってきた。


「普段の俺なら人前でこんなことできないから、レアだよ。あーんして」


言われるままに口開き、パクリと食べる。

胸がいっぱいでプリンの味が分からなかった。



「先生、恥ずかしくないのですか」


「違うでしょ、名前読んで」


なっ…。
本当に要求されるとは思ってなかった。



「ほら、呼んで。呼んでくれるまで、ここを動かないよ」


人の目も気になる。
誰も聞いてないと分かっているけど、恥ずかしい。


「タ、クト…」


「くくくっ、なんかぎこちないね」


頑張ったのに、笑われた。
もう言わないからね!


先生との大学生活。
一緒の講義を受けて、放課後は勉強を教えてもらって。サークルに入ったりもして、充実した日々を過ごすのだろう。


けれど、


「彼氏とのキャンパスライフは確かに楽しそうですけど、私には菱川先生との夢のような新婚生活が待っていますので。あまり羨ましくないです」

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