心の中に奏でる、永遠の向日葵


向日葵も、そのことには気づいているのかもしれない。


でも、まるで気付かない様子で歩き始めた。
 



勇気を…。勇気を出そう。
 

「ひ、向日葵。白杖って、折りたたみ式だろ?しまえるか?」
 

「え?しまえるけど、なんで急に…」
 

俺は、向日葵の言葉を最後まで聞くのが恥ずかしくて、勢いで向日葵の左手を握った。
 

向日葵の目が、大きく見開かれる。
 

「…こ、これだったら、白杖必要ないし、視線も浴びないだろ?」
 

どう考えても、びっくりしているのは向日葵なのに。


俺自身も、なんで握れたんだ、とびっくりしている。
 

向日葵は何も言わない。沈黙が続いた。
 

や、やっぱり、変態みたいだったかな…?

下心も、あるっちゃある。でも、まず第一には、視線を無くそうって思いでやっているんだけど、やっぱりダメだよな…。
 

かちゃかちゃ
 

向日葵が、片手で白杖を折りたたんで、バッグの中に入れた。


向日葵の少し冷たい手が、よりぎゅっと俺の手を握りしめた。
 

「ありがとう」
 

向日葵は微笑む。心臓の鼓動がだんだん早くなってきて、顔が熱くなる。
 

「あ、あはは。まあ、これで視線は感じないよな。はは…」
 

適当な返答に、自分の心を誤魔化すような高笑いを添える。


どう考えても、バカみたいに焦っているのが見え見えだったが、向日葵は何も言わずに、微笑むばかり。



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