心の中に奏でる、永遠の向日葵
ドギマギしたまま、二人で歩き始めた。
やはり、俺たちが住んでいるところよりも、比較的都会な町だ。
高層ビルがあちこちに立っており、歩道にはたくさんの人が行き来している。
しかし、さっきまでの視線が嘘のように、だれも向日葵や俺に視線を向けない。
「視線、感じないな」
俺がそう言うと、向日葵は嬉しそうに頷く。
「やっぱり、白杖がネックだったんだね。新しい発見だな」
「え?向日葵、いままで気づいてなかったの?鈍感だなっ」
「なあに、その言い方!盲目を馬鹿にしないでよー!」
「盲目は馬鹿にしてないって。俺は、向日葵を馬鹿にしてるんだ」
「余計に最低!」
いつも通りの会話をして、笑いあう。
でも、道に映る俺たちの影は、お互いしっかりと手を繋いでいた。それだけで、俺はより、嬉しくなった。
俺の下心がどうこうの前に、まず向日葵のために役に立てた、というのが俺にとって一番うれしいことなのだ。
コンサート会場に到着する。ぞろぞろとたくさんの人たちが、ホールに入っていく。
俺と向日葵も、できるだけ目立たないように、ホールの中に入った。
薄暗く、舞台だけか明るく照らされている。
観客の、教養めいた声のボリュームに、なんとなく張り詰めた緊張感。
うん。俺にはやっぱり、剣道大会よりも、ずっとこっちの方が合っている。
俺は向日葵の手を引き、三列目の席に座った。
もう必要はないだろうと、向日葵の手を離すと、少し虚しい気持ちになった。