心の中に奏でる、永遠の向日葵



「んもう、ノリが悪い。まあ、いいや。じゃあ、かえるの歌でも弾こう!」
 
「へ?か、かえるの歌?」
 

まさかの提案に、俺は目をぱちくりさせてしまった。
 

「うん。かえるの歌。知ってるでしょ?」
 
「い、いや、知ってるけど、そんな簡単なのでいいのか?」
 

当たり前のように答える向日葵に、俺は思わず心にあったことを、そのまま言ってしまった。
 

だって、カエルの歌なんて、ピアノやっていない人でも軽く弾けるくらいの、超簡単な曲だ。それなのに…。
 

「いいじゃん、別に。楽しめることに変わりはないんだし。日向君が、右手パート弾いてね。私が左手パート弾くから」
 

そういうと、向日葵は俺の返事も聞かずに、左手を鍵盤の上に乗せる。
 

かえるの歌くらいに簡単なものだったら、大して嫌悪感も生まれないかもしれない。


俺は、右手を鍵盤の上に乗せた。
 

指は震えてない。心の中に、あの黒い煙も上がらない。



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