檸檬の黄昏


場所は変わって都内の某所である。

禿雅史は自身の法律事務所で事務室作業をしていた。
パソコンに向かい美しい指がキーを叩いている。

ドアがノックされ禿はキーを叩いたまま応答する。
ドアの向こうから現れたのは、彼の専属秘書の女性だった。

週刊誌を携えており彼のデスクに雑誌を載せた。


「ぼくに動物虐待疑惑?」


禿はパソコンを打つ手を止め顔を上げる。
禿の使用人が週刊誌で告白したらしい。



「何が気に入らなかったんだろうね?」



禿は首を傾げる。



「まあいいさ。この告白者には、何が望みなのか聞いてあげて。ぼくの機嫌がいいうちに。これ以上邪魔をされると、お仕置きしたくなる」



女性秘書は、かしこまりました、と一礼すると禿の部屋から出て行った。



「虐待とは違うと思うけどな」



禿は呟く。


単なる躾だ。
粗相を正すための。

それの何が悪いのか。


禿はそれ以上にも以下にも思うことはなく再びパソコンに向かい、キーを叩き始めた。



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