あなたの名前は忘れたけれど。
数年前から、俺の寄り道の一つになったこのベランダ。


知らぬ間に知らない女の子が住むようになって、チラッと覗きにきただけだった。


俺に気づいた女の子は、俺にとっても美味しいオヤツをくれた。

最初は怪しんだが、すぐに打ち解けた。


美味い飯をくれる人間に悪いやつは居ないと思ってる。


その日から、俺のいくつかある名前の中に『ねこ』が含まれるようになった。


ねこ、と俺のことを呼ぶのは、女の子だけだった。


「ねぇ、ねこ…」


俺の名前を呼ぶ震えた声。
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