あなたの名前は忘れたけれど。
俺は、軽く頷いてみせた。


「うん、明日も待ってるね」


女の子は少しだけ微笑んで、特徴のある八重歯を口元から覗かせた。


ヒョイとジャンプし、ベランダの塀に登る。

最後にチラッと振り返った。


女の子は俺に手を振っていた。


「ねこー、また明日ね」


その問いかけに、俺は尻尾を少し揺らし返事を返す。


そのまま塀を飛び越え、寝床へ帰る事にした。


不思議なもんだ。

1人になりたがる癖に、いざ1人になると寂しくなって。


好きだと言えないまま、自分で自分を追い詰めて。


死ぬ事をかんがえながら、明日の事を口にする。
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