キミに降る雪を、僕はすべて溶かす
6-1
「利津子ちゃん。今日してる指輪、ミチルさんから・・・?」

店番の営業さんが外食に出かけ、睦月さんとお弁当を広げてるお昼休憩。
向かいのデスクから、彼女の遠慮がちな視線が傾げられた。

誰もいない時は下の名前で呼び合うようになって、ちょっと込み入った話もお互いに明かす間柄になった。
眸に気遣うような色が滲んでるのは、あたしの意に染まないんじゃないかって心配をしてくれてのことなんだろう。

「えっと・・・はい。昨日の夜、ホワイトデーのお返しと一緒に渡されて・・・」

それを晴らせるように、自然な笑みを浮かべる。

「婚約って言うよりは、証(あかし)みたいな感じですけど」

左の薬指に嵌まった指輪に目を落として、あたしはそう答えた。

プラチナのウェーブリングのセンターには、桜の花びらみたいなピンクダイヤモンド。サイドにホワイトダイヤの小さな煌めきが寄り添ったデザイン。
エレガントだけど、可愛らしさもあって。
年齢より幼く見えがちなあたしに合ってる。・・・素直に思う。
嵌めてくれたミチルさんも目を細めて、満足そうに微笑んでた。

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