キミに降る雪を、僕はすべて溶かす
休憩の終わり間近、化粧直しのついでに更衣室でスマホのチェックをすると、ミチルさんからラインが入ってた。

“直帰の予定だから、帰りは会社まで迎えに行くよ”

近頃は、ミチルさんが休みの土日祝日は、朝が駅まで、帰りは会社までの車の送迎が定着してて。更に時々こうして、平日に迎えに来てくれることも。
過保護ぶりに拍車がかかってるって自覚もあるけど、甘やかされてウレシイ自分がいるのも確かで。
複雑な心持ちで了解の返信を送り、バッグに戻すとロッカーに鍵をかけ、午後からのちょっと気怠い業務を開始した。




切りよく仕事を片付け、さくっと退社時間どおりで吉井さんと会社を出る。
春はもうそこまで来てるハズだけど、夜の冷え込みは緩んだりきつさが戻ったり、一進一退だ。
ダウンコートに身を包んだ二人とも、吹き抜ける冷たい風に首許をすくめ、寒いね、と顔をしかめ合った。

表の通りに出るといつもの定位置に、ミチルさんの車がハザードを点滅させて停まってる。

「睦月さん、実はミチルさんが迎えに来てて。挨拶させてもらってもいいですか?」

窺うように訊ねたあたしに彼女は一瞬、目を丸くし。それから、ふわりと笑んだ。

「利津子ちゃんの自慢のイケメンさんに会えるなんて、ドキドキする」

「いえあの、保科さんには負けちゃうと思うんですケドっ。えっと、ちょっと待っててください・・・っ」

自慢してるつもりは無かったのに、そう聴こえてたのかと恥ずかしくなって。赤らんだ顔を背けるように、C-HRに小走りで駆け寄ってく。
ミチルさんにも睦月さんを紹介したいと話せば、すぐに運転席から下りてきてくれ、二人の初対面が思わずに叶った。
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