キミに降る雪を、僕はすべて溶かす
胸元からそっとミチルさんを見上げると、黙って額にキスが落ちた。
目だけを交わしてから、あたしは淳人さんに向き直り、気持ちを込めて深く頭を下げた。

「・・・・・・応えられなくて、ごめんなさい・・・!」

云いたいことは在った。でもどんなに言葉を連ねても、言い訳だと思った。
淳人さんからは沈黙だけが返り、あたしはひたすら頭を垂れ続ける。
冷たい夜気に晒され、指がかじかんでも鼻の頭が冷え切っても、淳人さんが何かを言ってくれるまで。

「・・・・・・もういい、リツ」

やがて息を吐いた気配と、バリトンの声に。おずおずと頭を上げる。
厳しい顔付きは変わってなかったけど、それは本当にあたしを心配してくれてるからなのが、ひしと伝わってきてた。

「俺は志室との約束を果たすだけだ。その為なら、容赦なくお前を俺のものにする。忘れるな」

「・・・はい」

「菅谷も、せいぜい首を洗って待ってろ」

「そのまま返すよ、・・・淳人」

上から目を眇めた淳人さんに、ミチルさんは冷ややかに返し。あたしの肩に回した腕にぐっと力を籠めた。

二人は、火種の燻った導火線を挟んだまま、見えない切っ先を突き付け合って。・・・最後までお互いを譲らなかった。


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