キミに降る雪を、僕はすべて溶かす
「リツ」

ミチルさんに肩を抱かれながら車に向かおうとしたあたしは、不意に淳人さ
んの声に引き留められた。
肩越しに振り返れば、紫煙をくゆらせて佇む彼の姿が目に映る。

「いずれ俺が、その“檻”からお前を放ってやる。・・・必ずな」

ミチルさんのことを言われてるんだと、返す言葉に惑ってるうち。淳人さん
は背を向け、運転手さんが待つ車の方へと悠然と歩き出して行く。
少し呆然と、彼の乗り込んだ高級セダンが滑るように駐車場から走り去るの
を見送って。

「りっちゃん。・・・帰ろう」

優しく促され、助手席のシートに躰を埋めた。
吹き出すエアコンの風の音と、ハイブリッドのエンジン音だけが低く響く、
静かな車内。
疲れたのか、ほっとしたのか。自分でも何だか良く分からない。無意識に深
い吐息が漏れたのを、包み込むように大きな掌があたしの頭を撫でた。

「・・・ごめん。嫌な思いをさせたね」

申し訳なさが滲んだ悔いるような声音に、小さく首を横に振る。

「気にしないで、・・・ミチルさん」

「りっちゃんに聴かせる話じゃなかった。本当にごめん」

あたしを真っ直ぐ見つめた眼差しは、まるで裁きを待つ人のように。
強い何かを秘めてるのに、苦しそうに見えた。
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