12月の春、白い桜が降る。
「それで?まずは、私が誰かっていう説明から始めた方がいいよね?」

僕は短くはい、と答えた。

「私の名前は結川 陽(ゆかわ ひなた)
結川は結ぶに川で結川。
ひなたは、太陽の陽って書いてひなた。」


「結川…ひなたさんですか。僕は冬郷 陽(とうごう よう)です。」
「知ってるよ。
あなたも私と同じ、太陽の陽でしょ?」

「そうですか。」

彼女は先程から僕を知っているような素振りを見せていたため、名前ぐらい知られても今更驚きはしなかった。

しかし、彼女の名前を聞いても、やっぱりさっぱり見覚えも聞き覚えもない。

「ちなみに、年齢は幾つなんですか?」

「女性に年齢を聞くなんて、デリカシーがないなぁ。」

片方の眉毛を下げ、薄ら笑いをする彼女に対し、僕は小さな声ですみません、と謝っておいた。

「年齢はあなたと同じ、高校二年生の十七歳。
カフェでバイトもやってる。

さすがに住所はいいよね。
でも遠くには住んでないよ。
ここからバスで十五分もかからないところ。彼氏は…、いない。」

彼女は年齢の他にも、自分のことをベラベラと話し出す。

最後の、“彼氏はいない”という言葉に、一瞬間があったのは何故だろうか。

しかし、いないという事実に、どこか安心している自分が確かにいた。
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