やさしくしないで ~なぜか、私。有能な上司に狙われてます~
すでに、あのときにどうにかなっても、手遅れだったのだ。
岡先輩は、今の彼女と離れられない。
課長と付き合ってみて、それが分かるようになった。やっぱり、好きになった相手じゃなきゃダメなのだ。
私は、彼に微笑んだ。岡先輩は、じゃあね頑張ってねと声をかけて席を離れていった。

「余裕の表情じゃないの」岡先輩の後に、水口さんが近寄って来た。
岡先輩が置いて行ったビールをもって立ち去ろうと思ったけど、これでこの人と口を利くのも最後だと思って話をすることにした。
「自分から異動願い出したんだってね」
私は、水口さんがお酒を注ごうとしたのを手で遮った。
「ええ」

「もしかしたら、私がわがまま言ったせいかも知れないかと思って」
私は、驚いて彼女を見つめた。
「気にかけてくださったんですか?」世の中びっくりすることもあるものだ。
「なんだあ、違うならいいのよ。意地悪して職場から、いびり出したなんて言われたらいやだなと思っただけよ」
嫌がらせしてるという自覚はあるみたいだ。私は微笑んだ。
「大丈夫ですよ。そんな理由で辞めるわけないですから」
「そう、やっぱり仕事がきつかったんじゃなかったのね。理由は町田さんよね?」
「町田課長?課長は関係ないですよ」誤魔化そうかどうしようか考えた。

「彼って食えないわねえ。せっかくあんたと離れたと思ったのに、こっちにまったく興味を示さないなんて」
「それは、残念でした」やっぱり気を使ってあげるほどじゃない。

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