やさしくしないで ~なぜか、私。有能な上司に狙われてます~
「これ以上、話しても平行線ですね」
「俺達の関係は、平行線じゃない」
「平行線しゃなくても、離れて行くだけです。どうしてもここに置いておくなら……」
「会社を辞めるのか?」
「そうするかも知れません。どうして、急に無視したんですか?一番側にいて欲しい時に、どうして説明してくれなかったんですか?」

「時間が欲しかったんだ」
「便利な言い訳ですね」
「ああ、言い訳はするつもりはないが、確かに便利な表現だな」
「ふざけてるなら、これで失礼します」
「待て。話は済んでいない」
「お断りします」
「君は、まだ住むところを決めていないんだろう?」
「はい。でも、あなたには、関係ないことです」
「それは、良かった」
「遠慮します」
「ここまで通うのは、大変だろう。俺もそうだ。それなら……」
「失礼します。部長の世話にはなりません」

「都、怒ってるのか?」
「怒ってません」
「イライラしてるぞ」
「してるように見えるだけです」

「失礼します」
ドアの方に歩きかけて、立ち止まった。

ノックの音がして、ドアがあいた。
不意を突かれたところに、部長の腕がすっと伸びて来た。
そして私の体を引き寄せた。
部長が私を抱えたところで、ドアが開いて、人が入って来た。受付の女性だった。
ぎょっとした顔をしている。
「悪い、取り込み中だ。後にしてくれないか?」

ええっ?
彼は、入って来た人を追い出した。
女性を追い払うと、彼はしっかりと顔が見れるように正面を向かせた。

「やっぱり、怒ってるだろう?」
スッと腰に手を回して引き寄せる。
「怒ってるとしたら、どうだって言うんですか?」無視しよう。
そのうちあきらめるだろうから。

「都……顔をあげて、顔よく、見せて」
「何するんですか?」
軽く唇が触れた。
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