やさしくしないで ~なぜか、私。有能な上司に狙われてます~

「話し合ったからと言って、事態がよくなるとは思えませんが」私は、部長のいいなりにならないように気持ちを引き締め、背筋を伸ばした。
「そうだな。だから、今日は、じっくり君の話を聞くことにするよ」
「そんな……」
私は、部長の顔をじっと見つめた。今頃、何でこんなに丁寧に扱うのだろう。
「何してるの?帰る用意はできてるんだろう?行くよ」
笑っているけれど、目は真剣そのものだった。

私が、答えるまで彼は、口を開かない。
答えを言うまで、彼の瞳がしっかりと私を捕えている。
目をそらしたら負けだ。
それは、分かってるけど。
見つめあっていると、彼の瞳にこのまま吸い込まれてしまいそう。

いくつも断る理由を考えたのに、部長を目の前にすると何も言えなくなった。
「行こうか」
言われるままロビーを出た。
通りに出たら、そばにいたタクシーに乗り込むように言われた。
「さあ、乗って」背中を支えられてタクシーに押し込まれる。
「どこに行くんですか?」
「行けば分かる」

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