やさしくしないで ~なぜか、私。有能な上司に狙われてます~
「なかなかいい部屋だろう?
独り暮らしには、広すぎるな。
役職からして単身だと思われなくてね。家族と一緒だと思われてたみたいだ」
「そうですか。よかったですね」
私は、感情を表さずにいう。
「どうだ気に入ったか?」
「ええ」
「それなら、すぐにでもここに越してこればいい」
「冗談を言うのは、止めてください」
笑って言う。
「通勤、楽だぞ。慣れれば歩いて行ける。それでもやっぱり、ダメか?」
「はい。申し訳ありません」
私は丁寧に頭を下げた。
こっちにも、部屋を借りてもらって私を住まわす。自宅には、別の女性がいる。
二つの家を行き来して、双方の家に女を住まわせる。なんてズルイ人だろう。
この人なら、そのくらいのこと手際よくできそう。
どっちが愛人なんだろう。
聞くまでもないか。
「ちょっと待って」
部長は、片手で私の顔を上に向けた。
「待ってどうするんです?」帰ろうとしたのを先読みされた。
「まだ、帰さない。
どうして、そんな暗い顔てる?」
「一人暮らしのOLに、家賃負担ゼロだと言って誘う他にいい話はありますか?」
部長の思い通りには、ならない。
彼のペースにハマらないように、顎に添えられた手を振り払った。