やさしくしないで ~なぜか、私。有能な上司に狙われてます~

私は、課長の頭髪だけではなく、首筋の辺りまでしっかりと見た。
少しでも、年を取ることによる劣化の兆候を見つけようと試みた。
課長の欠点って、簡単には見つからない。

残念なことに、課長は年を重ねるごとに良くなっていくみたいだ。
その上、髪の毛はたっぷりあって、すぐに淋しくなりそうな様子はない。体型も引き締まっていて、緩んだところはどこにもない。

どこにもくたびれたところが見られないの?
いつもシャキッとして、姿勢もいい。禿げそうにも、太りそうでもない。
上から見ているのに、だんだん恨めしく思ってきた。
こうして、すぐ近くに立っているのに。

何で無視するのよ。

彼は……
私のことを、まるでいないみたいに無視して、仕事に集中している。

ほんと、ムカつく。
いっそのこと、課長なんて、ツルッと禿げてしまえばいいのに。

私は、彼の体に触れるほど近づいた。
「ちゃんと聞こえてますよね?」

「ああ、聞こえてるよ。お前の方も、今、俺が手が離せないのが見えないのか?」
そうですか。

「ここでお待ちしてますから、どうぞ、お仕事してください」
私は課長のことを、睨み付けた。呪いの言葉を唱えていることは、黙っている。
厳しい顔でいると課長は、ようやく顔をあげた。やれやれという表情のままだったけど。
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