やさしくしないで ~なぜか、私。有能な上司に狙われてます~
「そこで、なにやってんだ?神谷」

課長は少しイライラしながら言った。
彼に手間をかけさせたことに、私は、小さな喜びを覚えた。嫌みな言い方。

でも、この人に冷たい視線で見られるとゾクッとする。
彼は、いい加減にしろというように、頭をブルッとふるう。

「課長の髪の毛が薄くなればいいのにと、呪ってました」
「なんだ?俺は、いつの間にお前に恨みをかったんだ?」
「ついさっきです」
課長は、声を出して笑った。憎たらしいほど低くていい声をしてる。
ふん。

けど。
どうなの、これって彼氏としての態度?
あの時、私、やっぱり熱に浮かされてたのか。
こうして、この男の薄情なところを見ると、一緒に暮らして楽しい人間だとは思えない。

「神谷、お前相変わらず、面白いな」
「課長を楽しませるために、ここに立ってるわけじゃありません」
「ほう、じゃあなんだ?」
「あれは、私の仕事です」
「それで?」課長は手を止めて、私の顔を見あげた。
仕事モードの顔だ。甘さは一切ない。
こういう時のこの人は、公私をきっちり分ける人だ。
甘い顔は一切しない。まあ、予想通りだけど。

町田課長って、恋人にはしたくないタイプだ。
前は、そう思ってなかった?
いくら、目の覚めるようなイケメンでも。

彼の部下になって、3分でわかった。
この人は、一緒に住むタイプの人間じゃないって。

「どうして人に任せるんですか?私の仕事なのに」

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