やさしくしないで ~なぜか、私。有能な上司に狙われてます~

「田代の方が適任だからだ」
ほら、血もなみだもない。冷血男め。
課長は、同情も欠片もないそっけない声で言い放った。
かわいそうだから、相手に配慮してやろうなんて、気遣いは少しも見えない。

「そんなこと、ありません」
はっきりと言ったけど。
声ほどの自信はなかった。
そこまではっきり言われて、私はショックを受けた。
仮にも私は、開発課にいたのだ。
作った人間の方が詳しいに決まってる。
それなのに。

反論しようと思ったのに、言葉が出てこなかった。

課長は、私の方を真っ直ぐ見つめて言った。

「そんなに向きになるな。横取りしたのは、お前の方だ。田代じゃない。
お前がない横から余計な口を挟んで、事をややこしくしてるだけだ。
水口の件は前から田代がやってたんだ。田代にしたら、言いがかりをつけて来たのは、お前の方になる」
私は鼻をふんとならした。まあ、部下に対しては公平だこと。
部下としては、仕方ないと思うけど。
でもなに?
私は、あのメガネ男と同列なの?

この男、やっぱり同情もなにもない。
その言い方。当然とでもいいたげに、堂々としている。
当然だとばかりに、しれっとしていう。
「なぜです?電話に出た人が担当するんじゃないんですか?」
「原則は、誰でもいいことになってる。けど、それぞれ得意分野があるし、メンバーの力量もある。どんな仕事にも、運用上ルール通りに行かないことだってある」

「本当にそうですか?私が不足してるからじゃないんですか?」
「そうだな。ある部分は……」
「ある部分って、なんですか?」
聞こうと思って身を乗り出したら、課長も立ち上がってぶつかりそうになった。
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