やさしくしないで ~なぜか、私。有能な上司に狙われてます~
課長が背負ってタクシーに乗せてくれた?
彼、そんなことまでしてくれたの?
うそ……
まるっきり冷血男に見える課長が、私をおぶってタクシーに乗せてくれた?
にわかに信じがたいけど。
全然覚えてない。
私は、酔っぱらって上司におんぶしてもらって自宅まで送ってもらったのに。
お礼の一言すら言ってない。
これは、いかん。

オフィスに戻ると、私は町田課長の姿を探した。さっとフロアを見れば、オフィスにに課長がいるかないか、すぐにわかる。
独特の雰囲気のある人で、課長がいるとその場所の空気がピリッとしている。

中にはその場にいる人を和やかにする人もいるけど。課長の場合は逆だ。オフィスにいる社員の気持ちをキリッと引き締める。
場の空気に緊張を与え気を抜いてはいけないと思わせる。

私は課長のところまで行き、ただいま戻りました声をかけた。
「ご苦労さん」
課長は、キーを叩きながら答えた。目線は上げないまま、さっきと違う種類のデータの修正を行っていた。

「あの……お話があるのですが」
私は、改まって言う。
「今か?」課長が顔を上げる。
「はい。すぐにすみます。
この間のお礼が言いたいだけですから……」
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