旦那様は溺愛暴君!? 偽装結婚なのに、イチャイチャしすぎです
「結構かわいいじゃん。つーか雰囲気エロい」
「あれでどんな営業してるんだかなぁ。接待とかされてみてー」
ところが彼らから発せられるのはセクハラまがいな言葉。
そういう言われ方も慣れているといえばいるけれど……やっぱり不快だ。
私に聞こえているということは、津ヶ谷さんや周りの人にも聞こえているだろうし。
嫌な気持ちを感じながら、手元のタブレットで資料を見るフリをして、下を向く。
すると、突然津ヶ谷さんが歩き出した。
「津ヶ谷さん?」
驚きながら見ると、彼はスタスタと男性たちに近づき、目の前に立つ。
そしてニコッと口角を上げ、いつもの王子スマイルをみせた。
「いかがですか、当社のコーナーは」
「え?いや、俺たちは……」
「またまた。熱心にこちら見てらっしゃったじゃないですか。そんなに見つめられたらこちらも頑張ってご紹介しちゃいます」
戸惑い焦る男性たちに、津ヶ谷さんは明るい様子でその腕を掴み、半ば強引にこちらのブースへ連れてくると、あれこれと商品を勧めだす。
つ、津ヶ谷さん……すごいことを。
けれど、先ほどまで不快なことを言っていた男性たちが慌てる様子は、申し訳ないけれど少しおかしくて。ちょっと、すっきりした気がした。
そこまで考えてのことなのか、ただの営業成績のためなのかはわからないけれど。
それでも少し、嬉しく思えた。
それから2時間ほどが経ち、13時を過ぎたあたりで私はお昼休憩に入った。
「ふぅ……さすがに足パンパン」
普段歩き回ることはあっても、一ヶ所に立ちっぱなしでいることはあまりない。
おまけに今日も足元は高めのヒールだ。当然足はむくみ、ふくらはぎはパンパンだ。
今日の夜はお風呂にゆっくりつかって、マッサージして、着圧ソックス履いて寝よう……。
そんなことを考えながらトイレから出て、ご飯でも食べに行こうとドアに手をかける。
すると廊下からは話し声が響いた。