旦那様は溺愛暴君!? 偽装結婚なのに、イチャイチャしすぎです



「結構かわいいじゃん。つーか雰囲気エロい」

「あれでどんな営業してるんだかなぁ。接待とかされてみてー」



ところが彼らから発せられるのはセクハラまがいな言葉。

そういう言われ方も慣れているといえばいるけれど……やっぱり不快だ。

私に聞こえているということは、津ヶ谷さんや周りの人にも聞こえているだろうし。



嫌な気持ちを感じながら、手元のタブレットで資料を見るフリをして、下を向く。

すると、突然津ヶ谷さんが歩き出した。



「津ヶ谷さん?」



驚きながら見ると、彼はスタスタと男性たちに近づき、目の前に立つ。

そしてニコッと口角を上げ、いつもの王子スマイルをみせた。



「いかがですか、当社のコーナーは」

「え?いや、俺たちは……」

「またまた。熱心にこちら見てらっしゃったじゃないですか。そんなに見つめられたらこちらも頑張ってご紹介しちゃいます」



戸惑い焦る男性たちに、津ヶ谷さんは明るい様子でその腕を掴み、半ば強引にこちらのブースへ連れてくると、あれこれと商品を勧めだす。



つ、津ヶ谷さん……すごいことを。

けれど、先ほどまで不快なことを言っていた男性たちが慌てる様子は、申し訳ないけれど少しおかしくて。ちょっと、すっきりした気がした。

そこまで考えてのことなのか、ただの営業成績のためなのかはわからないけれど。

それでも少し、嬉しく思えた。





それから2時間ほどが経ち、13時を過ぎたあたりで私はお昼休憩に入った。



「ふぅ……さすがに足パンパン」



普段歩き回ることはあっても、一ヶ所に立ちっぱなしでいることはあまりない。

おまけに今日も足元は高めのヒールだ。当然足はむくみ、ふくらはぎはパンパンだ。



今日の夜はお風呂にゆっくりつかって、マッサージして、着圧ソックス履いて寝よう……。

そんなことを考えながらトイレから出て、ご飯でも食べに行こうとドアに手をかける。

すると廊下からは話し声が響いた。


< 120 / 160 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop