旦那様は溺愛暴君!? 偽装結婚なのに、イチャイチャしすぎです
「あ、あの……先ほどまでの津ヶ谷さんは、どこへ……」
「あぁ?俺に決まってるだろうが。同一人物だ」
「う、嘘!津ヶ谷さんは優しくて、笑顔が素敵で、そんな偉そうな言い方しなくて……」
にこっと一瞬でいつも通りの津ヶ谷さんの笑顔を見せる。けれどまた一瞬で、つい先ほどの黒い笑顔に変化する。
けれどそれはやはり正真正銘同じ人物で、同じ顔でも表情が違うだけでこんなにも別人に見えてしまうのかと唖然としてしまう。
つまり、私をはじめ周囲の人が知っている津ヶ谷王子としての姿は外面だということ。
そして、この偉そうでキツい物言いの彼こそが本性なのだということ。
「さ、詐欺……!」
「一見『私完璧ですから』って顔して、裏ではアニメ見てニヤニヤして楽しんでるお前だって、似たようなものだろうが」
うっ……。反論できない。
「王子が表向きの顔だってことはわかるとして、結婚ってどういう意味ですか……」
「あー……面倒くせぇ。来い」
「は!?」
津ヶ谷さんは私の腕を引き歩き出すと、資料室を出てエレベーターに乗る。
皆の憧れの津ヶ谷王子に腕を引かれる、というシチュエーションに惚ける間もなく、私はただ彼についていくことしかできない。
そして会社を出た津ヶ谷さんは、近くの通りでタクシーを拾うと私と一緒に乗り込んだ。