旦那様は溺愛暴君!? 偽装結婚なのに、イチャイチャしすぎです
「すみません、この住所まで」
スマートフォンの画面を見せる津ヶ谷さんに、運転手は頷くと車を走らせ始めた。
なんでタクシー?一体どこへ?
どうしよう、なんでこうなったんだろう、私はどうなるんだろう。
混乱する頭で必死に考えるけれど、余計混乱するだけで考えはまとまらない。
車に揺られながら頭を抱える私の隣で、津ヶ谷さんは口を開いた。
「俺の親はアキノグループの経営者でな」
「え?アキノグループって……うちの親会社じゃないですか!?」
「あぁ、そうだ。母親が社長、父親が秘書兼サポートって形でやってる」
アキノグループといえば、国内でも有数の大手アパレルメーカーだ。うちの会社も数年前に吸収され、子会社となっている。
その経営者の息子……ということは、津ヶ谷さんは社長息子であり、次期社長!?
「そんな人がどうしてうちの会社に?向こうの会社で働かないんですか?」
「子会社で働きながら、社員という立場で会社を見る。まぁ社会勉強ってところだな。来年にはアキノグループ勤務になる予定だ」
は、はぁ……。社長息子にもいろいろあるんだなぁ。
自分には程遠い世界の話に、気の抜けた声が出た。