旦那様は溺愛暴君!? 偽装結婚なのに、イチャイチャしすぎです



それにしても。あんな大きな家に住んで、お手伝いさんもいるなんて、津ヶ谷さんって本当に御曹司なんだなぁ。



昨日、呆然としながらもうちの親会社のことをネットで調べてみれば、確かに社長には『津ヶ谷良子』と彼と同じ苗字の名前が記載されていた。

うちの部長たちもなにも知らない様子だし、内緒にしているのだろう。



まぁ、まさか息子が子会社のこんな小さな部署で営業をしているとは思わないよね。

知られたら女性たちはいっそう騒ぎそうだし……。



隣でお弁当を食べる彼を、横目でちらりと見る。

にこりともしない、口角を下げた表情はやはりいつもの王子ではない。


けど、思えば小西さんの前でも王子でいるんだよね。

つまり家の中でもほとんどが王子の姿でいるということ。

……それって、息が詰まりそう。



自宅に帰った途端全てを解放するタイプの自分に、彼の立場を置き換えると、我慢できない。



「家の中でまで王子でいるのって、大変じゃないですか?」



不意に問いかけた私に、津ヶ谷さんは少し驚いたような顔でこちらを見た。

けれどすぐ、呆れたような不満げな顔に戻ってしまう。



「……俺のことより自分のことだろ。なんかすごい量の仕事引き受けてたし」

「うっ……」



見られていた。

チクリと刺すように言われて、否定できずに視線をお弁当箱へ向けた。


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