旦那様は溺愛暴君!? 偽装結婚なのに、イチャイチャしすぎです
「周りの奴がお前のことなんて評価してるか知ってるか?」
「へ?」
周囲からの、評価?
「『綺麗で完璧な桐島さん』、『仕事ができる桐島さん』、『桐島さんならできて当然』」
彼が述べたそのイメージは、私が望み描いていた通りのものだ。
けれど、彼が純粋に褒めてくれているわけではなく、その呼び方に嫌味が含まれているのはなんとなく感じ取れた。
「完璧が板につくってことは、周りはそれを当たり前だと思い込む。そのうち、人並みの努力じゃ褒められなくなる」
続けられた言葉に、胸の奥でどことなく気づいていたことを言い当てられたような気がした。
完璧。なんでもできる。
そう思われれば、否定されることはない。
だけどそのうち、その言葉や立場は当たり前のものになっていき、他の人ができないことも、できて当然になっていく。
それがだんだん重荷になっていると気づいていても、自分で仮面は外せない。
「たまには無理なことはやんわりとでも断らないと、自分で自分の首絞めることになるぞ」
彼の抑揚のない声が、ぐさりと胸に刺さった。
「……王子様のフリしてる人に言われても、説得力がないんですけど」
「そりゃあ悪かったな」
なんて笑って流した私に、津ヶ谷さんも笑って話を終わらせた。